ご近所大学の小さなつながり
ご近所のおじさまが、うなぎのねどこ貸して欲しいという。聞けば30年主宰している俳句の会で使いたいとのこと。
参加はしなかったが、築百年の木造町屋は筒抜けで、自然と会の様子が聞こえてきた。
季語を決めて、静寂の30分後、それぞれの句を詠み、1番良い句を選曲する。その繰り返し。
推敲しているピンと張った空気。
句が詠まれると次々と情景が浮かぶ。
憂があったり、微笑みがあったり、安堵があったり、空を見上げたり、風を感じたり、包まれたり。
グループのお帰り際に、感想を言うと。
「貴女は感じる心があるのかもしれないよ」と彼らの句集をプレゼントしてくださった。
短い言葉の中に、感情や風景のシークエンスがあり、想像をかき立てる余白が心地よい。
俳句って面白いのだなと、我流で時々詠み始めたり、テレビの俳句番組を見てみたり。なかなか難しく、先は遠いと感じていた。
そんな時、ご近所大学仲間のいさざ会館の講座に「自由律俳句」があるのを知った。
北品川のうなぎのねどこは、2015年オープン。空家空き店舗を活用した会員制のシェア&コワーキングスペース。現在11名のメンバーで共同管理運営している。
メンバーは、金継ぎ・いけばな・プログラミング・造形・英語・サイエンス・投資・シェアリング・奄美群島の暮らしと文化・中高生の居場所・関係人口づくりなどの活動をうなどこをベースに行っている。
うなどこが地域にとって学びの場になりつつあることや、もっと気軽にご近所さん達が学べたり、ご自身の持っている力を披露したり教えたりする場としての役割を強化したいと思い2018年1月より「ご近所大学」と命名した。
活動に先立って調べてみると、いさざ会館が「まいづるご近所大学」を開校していることを発見し同士と思い連絡をし、同じ思いの経堂アトリエ・生口島と共に舞鶴を訪問し交流を開始した。
交流の一環として互いの講座をオンラインで共有することを試みていたので、いさざ会館祭りで自由律俳句のワークショップがあると知り、申し込んだ。
ネットに入ると、舞鶴の皆は句を読む為まちあるきに向かうという。
フィードワークにより地域資源をみつけて、それを自分なりに磨く。という行為は、私の本業であるまちづくりや地域計画に通ずるところがある。
しばらくすると戻ってきて、句を詠み、ホワイトボードに書く姿がスマホの先に見える。
本当に自由律であった。
俳句のような方もいれば、スローガンのような方、つぶやきのような方。各々さまざま。
ただ、青い空、羊のような雲、烏瓜の赤、などの鮮やかな色が脳裏に浮かぶ。
自由律が何かも掴めぬまま、オフラインとなったが、570キロ離れた舞鶴の情景を感じたひとときは、心の距離も縮まる確かなご近所さんだった。
覗き込めば◯◯
舞鶴、北品川、知ってる町、まだ見ぬ町、そんな小さな関係が網のようにつながっていけたらいいなと思う。